早いもので2021年も終わろうとしています。
マスクや消毒、手洗いうがい等の感染対策も新しい生活様式としてルーティーン化しつつあります。
風邪やインフルエンザの予防にもなっているので、
年末年始も気を抜かず、感染対策と免疫力アップの基本である規則正しい生活を心がけたいものです。
私は今年9月から赤磐ぐんぐんで働き始めました。
全くの異業種からきたので、これまで『療育』という言葉すら知りませんでした。
当然ASDについての知識もなく、まさにゼロからのスタートでした。
今回の会報では、私がASDや療育を学んでいるうえで
面白いなぁと思ったこと・びっくりしたことについて、書いてみたいと思います。
採用試験の面接で、
iPEC(子どもとおとなの心理学的医学教育研究所)のホームページにて公開してある
吉田友子先生が自閉スペクトラムについて概説しておられる文章を読んで感想を書くという課題があり、ここで初めて『三つ組』という言葉に触れました。
iPEC(子どもとおとなの心理学的医学教育研究所) - iPEC-子どもとおとなの心理学的医学教育研究所 Institute of Psychomedical Education for Children and adults- (ipec2005.com)
三つ組とは、ローナ・ウイング先生が
自閉スペクトラムの脳タイプについて説明したもので、
①人とのかかわりの質
②社会的コミュニケーションの質
③社会的イマジネーションの質・柔軟性の発達の苦手のことだそうです。
文章のトピックとして『三つ組は長所でもある』と太字で書いてありました。
『「空気が読めない」「一方的」といえば弱点ですが、裏を返せば「常識にとらわれない」「人の思惑で右往左往しない信念の人」ということです』
『「興味が偏る」といえば弱点ですが、「自分の好きなことへの集中力・知識欲・向上心は人一倍で、そのことについては知識や技術が高い」かもしれないし、「融通が利かない」といえば弱点ですが「パタン的/具体的な記憶は得意」「納得すれば真面目、努力家」ということでもあります』
これを読んで私は、「履歴書と一緒だなー」と思いました。
皆さんも就活対策などで
「短所は短所として答えないように!見方を変えると長所にもなる短所を答えましょう!」
と教えられたことがあると思います。
このように、表現の仕方によって受ける印象は全く違うものになります。
私はこの文章を読んで、「良い表現だな~」と純粋に感動しました。
漠然と「療育ってきっとマイナスをプラスに変えてくものなんだな、素敵だなぁ」と思っていました。
ですが、最初に感じたこの考えは、実際に療育を学んでいく中で、変わってきました。
マイナスをプラスに『変える』のではなく
もともと持っている本人の能力を『引き出す』ことが大事であり、
直すのではなく『生かす』ために
本人の特性や学習スタイルを理解して、
本人の弱みを強みによって補っていく。
その方法をご家族と一緒に探していくものであると今は感じています。
もう一つ驚いたことは、お子さんへの寄り添い方です。
「子どもの思いやその子なりの考え方に共感することが大事」
「分かってもらえていると感じることで、信頼関係が作っていける」
と教えてもらった際、
「なるほど」「共感してもらえる方が安心できるよね」と思いました。
ですが、これもそんな簡単な話じゃないんだなと感じました。
「お母さんおそい」「もう!何やっているんだよ」とつぶやいている子に対して、
先生が「『お母さんおそいな』って思ってるんだね」と返しているのを聞いてびっくりしました。
私の頭の中の選択肢には
「そうだね、おそいね」というそのままの共感の返答しかなかったからです。
なんでわざわざ繰り返すんだろう?と思いました。
怒って「バカ!」と言っている子に「『やめて』って言っていいよ」と声をかけたり、
「(パズルのピースが)ないない!」と叫んでいる子に「『パズルください』だね」など、
先生たちの声かけが独特だなぁと思いました。
先生たちにあとから質問すると
「ASDのお子さんは、相手がそれを聞いたらどういう風に受け止めるかを理解しづらいことがあるんです」
「言葉だけ聞くと『そんな言い方ダメでしょ!』と怒られたり誤解されたりもあるかもしれない」
「だから、お子さんが発言している言葉の真意というか、本当に言いたいことが何かを推測して代弁したり言い換えを教えたりしているんです」
「でも私たちも毎回ヒットする訳じゃないから、そこはお母さんたちと一緒に考えながら手探りでしているんですよ」
と答えてくださいました。
これは、
関わり方にコツがいる・・・
知識を持って接する必要がある・・・!
ということにそこで気づきました。
最初は
本当に何と声をかければいいのかわからず、手も足も出ない・・・という状態でした。
勉強していく中で、
『言葉はたくさん知っていてもそれを言語スキルとして活用する能力にギャップがあり、
不安や緊張などでコミュニケーション能力が大きく変動すること』を知りました。
「お母さんおそーい」という発言に対して、
本人の気持ちにただ共感するのではなく、
本人の本当に言いたいことが
うまく言葉にならないところに焦点を当てて「共感」する、
それによって自分の気持ちを理解して正しく伝えられるようになる。
また、「方向性がある、方向性がない」というのも最初理解ができませんでした。
毎日の振り返りミーティング「○○ちゃんが『みてー』と言っていました」と報告すると
「方向性はあった?」と聞かれて「???」。
「△△ちゃんが玩具しか見ていない状態で話かけてきていたので、こちらの顔の前におもちゃを持ってきて話をしていくことで、やっと私の存在に気づいてくれました」
と他の先生が報告されていて、
『人を意識する』ということも、
ASDのお子さんたちは工夫して教えていかないと身につかないのか!とびっくりしました。
自分が普段、「方向性をもってコミュニケーションしている」ことを人生で初めて意識しました。
ASDの人は、
いわゆる定型発達と呼ばれる人とは、情報のキャッチの仕方・理解の仕方に違いがあるそうです。
だから、
どれからやったらいいか・どういう手順でどう優先順位を決めながらやったらいいかなどがパッと分かりづらいという実行機能の面で課題があったり、
相手の気持ちに自然には気づかないなど社会性(対人やりとり)の面で課題があったりします。
そういう脳の特性・脳のタイプを持っている人たちなんだということを、
赤磐ぐんぐんで働きだして、現場で先生たちやお子さんたちから教えてもらっている毎日です。
ASDのお子さんたちが、
経験から自然に学ぶのは難しいのであれば、
本人の学習スタイルや特性に合った教え方をしていく必要があります。
相手がどう感じているか、どのように振る舞えばよいか、何から始めていけば良いかなど、
具体的にひとつひとつの場面について丁寧に学ぶ必要があります。
「子どもって大体そういうもんだよね」
「成長するにつれて自然にできるようになるはず」
とASDのその子に合った支援・教え方をされないままでいると、
周りの期待が高くなってくる時期に
「なんで何回も言ってるのにいつまで経ってもできないの!!」
と怒られてばかりになってしまうかもしれません。
また、その子自身が見えていないとたとえやり方だけ知っていても使えません。
「ASDのその人」に合わせて支援するには、
本人に対する理解・本人の考え方や感じ方・本人の学習スタイルを
しっかりアセスメントすることが必須になります。
どの方法がその子にとって理解しやすいか、正解はわかりません。
まさに手さぐり。
試行錯誤しながらご家族と一緒に探していくのが療育だと感じています。
先月の会報でもI先生が書いておられたように、
ご家族は普段のお子さんの言動をよく知っていて、
療育の先生たちは専門的な知識や支援のアイディアや引き出しを持っています。
両者が共同治療者となることで、より本人に合った支援ができるのだと思います。
アセスメントに基づいて色んな方法を試してみて、
お子さんが確実に理解できる方法を見つけていく。
そうやって見つけたコツを
ご家族と一緒に確認し、繰り返し練習していくために、
ご家庭でも取り組んでいただき、少しずつ定着していけるように同じ方法を試していく・・・。
そうしてご家庭の中でご家族がわが子への子育てのコツをつかむことが、
とても大事なんだと感じています。
その子らしく、その子らしい方法でその子らしさを生かして
生き生きと生きていけるような支援をご家族と一緒に見つけていきたいと思い、
療育現場に入らせていただいたり、
お子さんと関わったり、
ご家族とお話させていただいたり、
DVDを見てレポートを書いたり、
他の先生たちの意見を伺ったりしながら毎日勉強しています。
9月の最初に見えていた景色と今とではずいぶん違ってきています。
「難しい」「わからない」にやっと気づいてきたところです。
まだまだ勉強が追いついていないとも思いますが、
日々スモールステップで、お子さんやご家族に教わりながら成長していきたいと思っています。
これからもよろしくお願いします!!
(赤磐ぐんぐんスタッフ:U)
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