~赤磐ぐんぐんだよりは、
 松田以外の療育スタッフが 毎月交代で、育てる会会報掲載用に書いています~


赤磐ぐんぐんだより 2022
6月末号

 

 

今回のぐんぐんだよりは「モチベーション」について、です。

私たちが何かの勉強や練習に取り組む際、
「モチベーション」というのは大切な要素です。


 

「モチベーション(motivation)」について調べると、
「やる気」「意欲」「動機」などの意味で用いられる表現で
主に「行動を起こす契機となる刺激や意欲」といったニュアンスで用いられることが多いようで

何かをする上での動機・やる気のことを「モチベーション」と定義されているようです。

 

先日YouTubeである動画を見ていた時のこと。

元日本代表の陸上競技のコーチが、ゲームのキャラクターの走りについて雑談を交え解説する動画の中で、
「このキャラクターは『練習嫌い』という設定のようですが、
 実際に練習嫌いの子がいたとしたら、コーチならどのように『モチベーション』を持たせますか?」という質問がありました。


コーチの回答は
「目標設定が大切だと思います。
 本人は何を目指しているのか、次はどの大会で結果を狙っていて、どのくらいの記録を出したいと思っているのかを聞いて、
 練習内容とすり合わせることで『モチベーション』につながっていきます」というものでした。

 


私はそれを聞いて
「療育に来ている子どもたちも、本人の中で『こうなりたい』『これができるようになりたい』というようなハッキリした目標があれば、
それを活用することで学習に対する『モチベーション』につながるのでは」と考えました。

 


大人が「こうなってほしい」「これができるようになってほしい」というものは、
例えば
「自分で磨き残しなく、歯みがきをしてほしい」
「持ち物の管理が一人でできるようになってほしい」
「朝、自力で起きてほしい」
「友だちと仲良く遊べるようになってほしい」など
今その力を身につけておくと、将来大人になった時にも役立つ、というようなものが多いように思います。

一方
子どもが思う「僕、こうなりたい」「これができるようになりたい」はどういうものでしょう?


もしかしたら
「自転車に乗れるようになりたい」
「お風呂に入らず勉強もせず、ゲームをずっとしていたい」
「好物以外は食べたくない」など
目の前の「今」に向いていて、大人が思う「こうなってほしい」というものとは、
少し乖離しているかもしれません。

 

どちらの言い分が正しい・間違っているということではありません。

ですが、
周りの大人が「こうすべき」ということだけでは、なかなかお子さんたちは「モチベーション(動機・やる気・意欲)」を持ちにくいと思います。

自分たちが子どもの頃も、「将来」「大人になったら」と親から言われたことで
「よし!やるぞ!」とモチベーションを持つことは、少なかったのではないでしょうか。

そういう年齢的なところに加え、
ASDのお子さんたちには興味関心の狭さと深さがあります。

自分の興味の持てそうにないことに対して
「皆がやっているから」
歳になったんだから」
「やったらかっこいいよ」といった
世の中・社会一般的・常識というような話の持って来られ方をしても、
それがモチベーションにはつながりにくいのです。

 

ですから、
まずはその子の思い・見ている世界・今の興味関心を知り、
それをうまく取り入れながら、
大人の思う「将来」「大人になる時に必要な力」に繋げられるよう、
「すり合わせ」が大切になると思います。

 

 

モチベーションについて、私の体験でうまくいかなかった経験があります。

 

ある日の療育でのこと。

A
くんに対人コミュニケーションの練習として、Bくんを誘うという練習をしようと設定しました。

以前、BくんがAくんを誘ってくれて、ブロックで楽しく遊んだことが何度かありました。
Bくんと遊ぶことは、経験したことがある」
「一緒に笑い合うなど楽しそうな姿があった」
「ブロックはAくんもBくんも好きな玩具」
「園で友達を誘うということを身につけてもらいたいというお母さんの希望にも沿う課題」
ということで、本人にとってもモチベーションが持てる場面だと考えての設定です。

 


Bくんに『一緒にブロックをしよう』と誘いに行こう」と
私が台詞などを視覚的に伝えて提案すると、
Aくんは「いやだ」とはっきり拒否しました。

「え?なんでだろう?」と思って理由を聞くと、
その日Aくんは「一人で」ブロックを作って遊ぶつもりで来ていたそうです。


ブロックは好きだからこそ、
「誰かと一緒に」ということは モチベーションを持ちづらいこと・
以前誘われてブロックで楽しく遊べた時も、
実はBくんを意識してというよりは、
ブロックそのものをやりたいと思っていて、
それを持っているのがBくんだったから、ということのようです。


 

このことから、
いくらこちらで教えたいことがあっても、
本人のモチベーションが持てていないと、
意味を持って取り組みづらいということが分かりました。

 

 

逆に、本人のモチベーションに合わせたことで、うまくいったことがあります。

 

Cちゃんは、
「人に呼びかける」という注意喚起がコミュニケーションの課題です。

取り組んだプリントをお母さんに見てもらう、というような設定の時には、
あまりモチベーションを持てずに「まあ、言われたからやるけど…」というような姿勢でした。

 

そこで、
Cちゃんの大好きなキャラクターの塗り絵をして、それをお母さんに見てもらう、という課題にしたところ
「丁寧に塗りたい」と塗り絵そのものにも モチベーション高く取り組み、
「お母さん、見て!」としっかりハッキリと呼びかけ、
他のスタッフや別の場所にいた同室のお子さんにも「ねぇねぇ、これ○○なんだよ。見て!」と、
こちらが意図していた以上にしっかり呼びかけることができていました。

方向性を持って相手に呼びかけるためには、「伝えたい」という思いが大事になります。
この場合は、本人の好きなもの・興味関心を活かしたことでモチベーションが高まったのだと思います。

 

 

また、ASDのお子さんは経験したことから学ぶ力が強いです。
そのため、本人の中でのモチベーションや意味付けが、実際の体験の中から生まれることもあります。


「こんな時どうする?」をチャート形式で教えられていたDくん。
例えば
「先生に用事があるんだけど、その先生がいない時」
「声をかけても、相手に気付いてもらえない時」など、
色々な状況で、どういう解決策があるかをチャートでまとめ、それをファイリングして保存して使っています。

最初のうち、本人はそのチャートを使うことに対しての効果がよく分からないようで、
「またこれかー」とコメントしていました。

ですが、実際に自分の困った状況が
そのチャートを使うことで解決したということを体験していくことで、
同じような状況になった時に、自らそのファイルを見るようになったのです。

それはまさに体験的に、Dくんにそのファイルを使うモチベションが生まれた姿でした。

 

ご家族にもその場面を一緒に見ていただき、
「家でもこのファイルを見て『今のってこれを使ったらいい場面だよね』と本人からコメントしていました」とコメントしてくださったり、
「宿題だったので、私(母)も早速書いてみました」と見せてくださる姿から
ご家族もこのような方法で取り組む モチベーションを感じてくださっていることを嬉しく思いました。

 

 

最初に紹介したYouTubeの陸上コーチの言葉にもあったように、
本人にとっての「目標」をどこに置くか
本人が「モチベーション(動機・やる気・意欲)」を持てるようにどう仕掛けを作っていくか
そのあたりが療育の中でご家族と一緒に考えていけると良いなと思います。

そのためには、まずは「今」その子が何に興味があって、どうなりたいと思っているかが大切です。

ぜひご家族からも教えていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 


(赤磐ぐんぐん療育スタッフ:I