蝉の声が聞かれるようになり、いよいよ夏本番ですね。

ぴっぴの子どもたちから暑さに負けないくらいのパワーをもらいながら、毎日、元気に療育を行っています!!

 

保護者同室の療育を行っているぐんぐんぴっぴでは、保護者の方と一緒に考える機会を大切にしています。

お子さんの今の姿から保護者の方から気づきや思いをお聞きし、何を課題に取り組んでいけばいいのか整理するようにしています。ぐんぐんぴっぴに通っているお子さんたちは年齢が小さいため、生活の中心はご家庭です。
だからこそ、家庭との連携は必須だと考えています。今回はお子さんの伝える力を伸ばすことを目標に保護者の方と一緒に考え取り組んだお話です。

 

4月から通っているAちゃんは初めての場所や慣れていない相手への緊張が強いお子さんです。通い始めたころは、緊張のためお母さんの側から離れられないほどでした。しかし療育の回数を重ねるたびに緊張が緩み、Aちゃんの笑顔がどんどん増えていきました。

お母さんから「家ではいっぱいお喋りもするし、結構、活発なんですよ。外に出ると大人しくなって私()の側から離れられなくなるんです」「4月から通い始めた園では泣かずに離れられるようになったのですが、先生になかなか伝えられずにいることも多い様です。家だと私や父親に伝えられるのですが・・・」「家と同じようにAちゃんが園やぴっぴでも欲しい物やして欲しいことを伝えられたらもっと安心できると思うんです」とお聞きすることができました。

ぴっぴに通っているお子さんで、慣れた家庭や相手ならできるけど、他の場面では同じようにはできないということを保護者の方からお聞きすることは少なくありません。

Aちゃんのお母さんの言われるように、家以外の場所でもAちゃんが自信をもって自分から伝えられるようになることはAちゃんの安心して生活することに繋がることは間違いありません。そこで、まずはぐんぐんぴっぴの中でAちゃんがどんな風にコミュニケーションをとるのかをお母さんと一緒に確認することにしました。

 

棚の上のおもちゃが欲しい時に一生懸命棚の方に手を伸ばしてみるものの手が届きません。しばらくして、Aちゃんは棚の上のおもちゃで遊ぶことを諦め、机の上にあるおもちゃで遊び始めました。

そこで、支援者が「Aちゃん、何で遊びたいの?」と声を掛けました。
すると棚の上を指さし、さっき一生懸命手を伸ばして取ろうとしたおもちゃを指さして教えてくれました。他にも、円柱積み木を高く積んで遊んでいる時に、だんだんと高くなり自分で積めなくなると諦めて円柱積み木を片づける様子が見られました。

これらの様子から、

・自分から伝えるのは難しいが相手から働きかけられると伝えられることができる

・自分でできないことは母や支援者に頼めばいいと思っていないかもしれない

ということをお母さんと確認しました。

そして、お母さんご自身も「今までお家でAちゃんから伝えられると思っていましたが、私がAちゃんが伝えたいことを先回りして汲みとってあげていたのかもしれない」ということに気が付いたことを教えてくださいました。

 

Aちゃんがいつでも・どこでも・だれにでも自分から伝えられる力を伸ばすための練習を療育の中で取りくんでいくことにしました。お母さんとどの場面で練習をしていくかを作戦会議をしました。

楽しい遊びの中の方がリラックスして伝えられるかもしれません」「自分ではできないことの方が人に頼もうとするかもしれません」ということで、円柱積み木を積む遊びで、Aちゃんが手が届かなくなり、自分で積めなくなったら抱っこをお願いして積める状況を作ることにしました。

Aちゃんが大人に抱っこしてもらうと、手が届かなくても積むことができるんだということに気が付けるように、最初はAちゃんから要求が出なくても抱っこするようにしました。

2回程抱っこしてもらって積むことができると、なんとAちゃんからお母さんのところへ背中を預けて抱っこしてもらうことを期待する姿が見られました。
今度はAちゃんが抱っこを期待して動き始めたタイミングでお母さんにAちゃんの正面に回り込んでもらい抱っこしてもらうことにしました。繰り返すうちに、お母さんの方へ手を伸ばして抱っこを求めては積み木を積み、その度にとびっきりの笑顔を見せてくれました。

今までは、自分でできなくなったら、終わっていた遊びでしたが、Aちゃんはお母さんに「抱っこしてほしい」と伝える事でさらにその遊びを楽しむことができ、笑顔も増えていきました。
その姿を見たお母さんからも「Aちゃんの嬉しそうな顔がたくさん見えて嬉しいです」「自分から伝えられるって大切ですね」とうれしいご感想を頂きました。
そしてご家庭でもお母さんをはじめご家族がAちゃんからの発信を待ってから要求を叶えるようにしてくださっていると報告も頂いています。

 

低年齢のお子さんは自分ではできないことがたくさんあります。
今回のAちゃんのように、大人に伝える事で、諦めなくてもいいということに気が付いていないお子さんもいるかもしれません。
大人がお子さんの気持ちを察知できる場合であっても、お子さんから伝えてくるまで待ってみたり、伝え方を教えてあげたり、繰り返し練習することで、お子さんの人へ伝える力は伸びていくのではないでしょうか。

今では、Aちゃんはお母さんだけでなく支援者に対しても「抱っこしてほしい」ことを伝えられるようになっています。これからは、抱っこ以外の要求が伝えられる機会や伝える相手を増やしていくことを目標にし、保護者の方とコミュニケーションを大切にしながら、丁寧に取り組んでいきたいと思います。

 

                           ぐんぐんぴっぴスタッフ:M