松田以外(たまに松田も)のスタッフが書いています(2か月に一度)
赤磐ぐんぐんだより(2023年10月末号)
さわやかな秋風に、高く澄んだ空。心地よい季節になりました。
幼稚園や保育園では運動会や遠足など秋の行事が続きますね。
ご家族からの連絡帳でも、お子さんの頑張った姿や可愛かったお話を色々教えていただけて、スタッフ皆で癒されたり成長を一緒に喜びあえたりしています。
またぜひ教えてくださいね。
さて、今日は「赤磐ぐんぐんのお部屋」について。
赤磐ぐんぐんは、個人病院だった建物に色々工夫しながらお部屋を作っています。
以前は「先生と勉強」「一人で勉強」「グループ活動」「遊び」のエリアに分かれていました。
今回、遊びをカテゴリーごと(組み立て遊び・人形あそび・工作・クーゲルバーンやごっこ遊び玩具など)のエリアに分けて設定しました。
最初は支援者の方が変化にどんな反応があるかドキドキしていましたが、
「余暇を広げる」
「並行遊びの設定を作る」
「玩具を自分で出して自分で元の場所に片付ける」
「コミュニケーション機会として設定する」
などを目的に、ご家族や子どもたちに理由と内容を説明した上で、レッツチャレンジ!で変更してみることにしました。
今回はこのような環境調整して見えたお子さんのエピソードをご紹介します。
エピソード①
Aくんは折り紙が大好きなお子さんです。
遊びの時間になると必ず折り紙を要求して、黙々と作っていました。
支援者が他の子に意識が向くよう「○ちゃんが△△しているよ」などと声をかけるとチラっと注目はしても、再び折り紙に集中する様子があり、支援者が他の遊びに誘いかけても首を振って折り紙に戻っていっていました。
新しいエリアになって、折り紙が「工作での遊び」に取り出されたため、「いつもの『遊び』でどんな風に過ごすかな?」と心配していました。
すると、Aくんは遊びの時間にスッとピンアートを選んで遊び始めたのです。
それだけでなく
同室児が「わぁ!こんなのができた!」とコメントをするのを聞いて注目したり、
Aくんも面白い形を作って同室児に対して「見て」と自分から伝えに行ったり、
別の遊びをしている同室児同士の会話を聞いてその様子に注目し微笑んだりする姿が見られました。
エピソード②
Bちゃんは「人形での遊び」エリアに行くと、動物の人形を一列に並べて並べ、それができあがると「おしまい」と言って片づけ、同室児が遊んでいるのを見て過ごしています。
ご家族に家での遊び方について伺うと「一人では遊びが全然続かないんです。園でも遊びを転々としたりうろうろしていることもあるようで…」と仰っていました。
「もしかしたら、そもそも人形でどうやって遊んだらいいかが分からないのかも?」
という見立てをご家族に伝えると
「あるかもしれません」「わざわざ教えたことはなかったかも」
とのコメントをいただいたので、人形での見立て遊びのやり方を勉強で教えることになりました。
言葉だけより視覚的に示される方が理解が得意なBくんなので、イメージを共有しやすいように、画用紙で草原シートを作り「動物が道を歩いて(池の)お水を飲んだら動物園に帰るよ」と伝え、実演をしてみせました。
「てくてくてく(動物の人形を歩かせる)…ごくごくごく(動物の人形が水を飲むしぐさをする)…てくてく(動物の人形を歩かせる)到着~!(動物園の絵の箱に入れる)」
そして
「次はBちゃんの番ね。どうぞ」と渡すと、初めは動作のみを模倣していましたが、
何度か繰り返すと「てくてくてく…ごくごく…てくてく到着!」とセリフも模倣できました。
その様子を見られたご家族は「土台(草原シート)があることでイメージを理解できたんだと思う」と話されました。
その後、「人形での遊び」の活動で、
「先生、一緒に遊ぼう!」と支援者を誘い、動物の人形で学んだ遊び方を再現するだけでなく、自分で考えて人形を歩かせて近くに合った玩具のコップの前までいき「ごくごくごく」と飲ませて楽しむ姿が見られました。
また、ご家庭でも兄弟と一緒にごっこ遊びを楽しめるようになり、お医者さんごっこやままごと遊びなども、最初は模倣→他の物でアレンジ→自分でもやってみる、ができることが増えてきたようで、本人も楽しく遊べるものが増えてきているようでした。
AくんもBちゃんも、
「いつも同じ遊びをする・遊びが広がらない」というお話を伺っていて、
「そういう遊び方が好きなのかな?」と考えがちです(もちろんそれもあると思います)。
でも、AくんもBちゃんも「ASDである」ということから行動の背景を考えてみると、
もしかしたら
「暗黙的な学習の困難さ」
「注意の固着(注意を向ける幅が狭い深い)」
「実行機能の弱さ(流れや手順を考えることが苦手)」
「聴覚処理の独特さ(耳で聞いたことをイメージすることが苦手)」
などの学習スタイルが影響しているかもしれないと思うのです。
選び取って同じ遊びをしているのではなく、
そうとしかできていない・それしかやれないのであるならば、
「遊び方を明示的に示す」
「対面で教えてもらうことで注目ポイントに焦点を向けられる」
「モデルがあることで一連の流れを理解できる」
「イメージを助けてもらえるものを活用する」
などの工夫で、学ぶことができるのではないかなとも思うのです。
環境調整は本人の分かる!できる!を助けるもの。
今の環境が
本人の理解の助けになっているかな?これでいいのかな?
と常に考えることが大切だなと気づかされました。
また、こんなこともありました。
エピソード③
Cくんはルパンのようなカッコいい人や仕草が大好きな男の子です。
エリアを色々変更する中で
ごっこ遊びができるように人形のメルちゃんねねちゃん、やお医者さんごっこのグッズなどを用意したところ、
Cくんはメルちゃんを見るなり「かわいい♡」とメルちゃんの飛びつきました。
Cくんはかっこいい物好きと思っていた支援者はびっくり!
ご家族は「実は、お人形で遊ぶの好きなんですよ」と仰っていました。
メルちゃんやねねちゃんのお世話をしたり(ごっご遊び)、こえだちゃんで遊んでいる時はこえだちゃんのベッドを車に見立ててこえだちゃんを乗せてドライブに行ったり(見立て遊び)と今までにない遊び方をしているCくんを見て、よりCくんのことを知れたように思いました。
ついつい
「これは男の子の遊び」「これは女の子用の玩具」など
大人が仕分けてしまいがちですが、
本人が「これもやってみたいな」「これも楽しいな」と思ってやれるのが
「遊び」であり「余暇」であり将来の「趣味」「ストレス発散」などに繋がるのであれば、
選びシロに枠を入れてしまいすぎず、柔軟に提案していけるようにしなきゃなとも思います。
ASDの方は本人の理解に合った教え方で教えられるとしっかり学ぶことできます。
療育室を物理的に分けたことで見えたお子さんの姿や表情から、
色々な遊びを体験して、こんな遊びもある、あんな遊びもある!と知った上で
「これをしよう!」と自分で選択して取り組む時間は
本人にとって豊かな時間になるのだなと感じました。
そんな時間が少しでも多く作れるよう、
本人に教えられることは何か・また持っている力を発揮できるにはどういう環境がよさそうかなどご家族と一緒に考えていけたらと思っています。
これからもどうぞよろしくお願いします。
(赤磐ぐんぐん療育スタッフG)
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